岩田 京子『TS EX HEATシリーズ』フィールドインプレッション
2023.11.08 Update
Quiet Sports No.001
TS EX HEAT Crew & Spats
Liner PLUS Fleece Gloves
Foxfireフィールドスタッフで 登山ガイドである岩田 京子さんによる「TS EX HEATシリーズ」のヒマラヤ「アンナプルナ」でのフィールドインプレッション。 ヒマラヤの8,000m峰という極限のコンディションに使用した「TS EX HEATシリーズ」と「ライナーPLUSフリースグラブ」。岩田さんがヒマラヤ遠征に選び、限られた環境の中で感じたアイテムの魅力とは?
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岩田 京子
1976年、横浜市生まれ。日本山岳ガイド協会認定登山ガイド。MTB、スノーボード、キャンプ、釣り、マラソン、野外フェスなど様々なアウトドアイベントの制作に携わり、外あそびの楽しさを広めてきた実績を持つ。現在は国内での登山ガイドをはじめ海外でもツア―登山やトレッキングの添乗をしている。プライベートではヒマラヤ8,000m峰、チョオユー、マナスル、エベレスト、ローツェ、アンナプルナⅠ峰と5座の登頂を果たしている。
TS EX HEAT クルー & スパッツ
2023年4月~5月に計画した海外遠征に向けてセレクトしたインナーウェア。行先は、ネパールのヒマラヤの高峰、8,091mのアンナプルナⅠ峰。
今まで8,000m峰を4座登頂してきたが、今回目標とする高峰は情報も少なく雪崩の危険も多い為、危険な山として有名な場所。リスクを減らすため、荷物も出来るだけ少なく身動きのとりやすい状況で向かいたいが、登山装備などの軽量化は限界がありこれ以上削る事は出来ない。他に荷物があるとすればウェアだった。ベースキャンプ(BC)を出発して登頂し、ベースキャンプに下山するまでの6日間着用すべくウェアの検討をする。ウェアは肌に触れるモノが一番重要な為、いつも慎重に吟味する。
特に重要なのは凍傷のおそれのある靴下。これはサミット用と予備を1足。BC、C1、C2、C3、C4までは日中歩くので、汗をかくこともあり靴下は濡れてしまう。そのため就寝時にシュラフの中に入れて乾かすことにする。そんな感じで2足を交互に使用。
次に重要なインナーウェア。着替える想定をしていないので6日間着用し続けられるモノとしてTS EX HEATをセレクトした。
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セレクトした理由は、
① 軽量なのに暖かい
② 汗をかいても冷えない
という2点を考慮した結果。
今まで着用した事のない感じのインナーだったので、汗をかいたときの肌触りが心配だったので、日本の雪山でも試してみた。 第一印象としては『こんなに軽くて大丈夫なの?という位のフワッとした着用感』。しかし、これが行動中には素晴らしく威力を発揮してくれた。行動中は少なからず汗をかいてしまう。それをうまく換気してくれているかのように排出してくれると同時に、内側にある起毛繊維が汗冷えしないようにうまく保温してくれた。これならば遠征でも活躍してくれそうだ!という事で採用。
実際にベースキャンプでも上部キャンプでもほとんどの時間着用していたが、不快感や冷えを感じる事はなかった。 ベースキャンプでは2回ほど手洗い、手絞りをした後に天日干しをしたのだが、乾燥がとても早かった。朝食後に洗濯をしても、午後にはしっかり乾いていた。この速乾性のお陰で、他のインナーウェアをほとんど使用せずに済んだ程。そして、しっかりと身体を保温してくれたので無事に下山することができたのもTS EX HEATのお陰です。
ライナーplusフリースグラブ
自身のチャレンジとして、世界で10番目に高いとされるアンナプルナⅠ峰(8,091m)へ遠征に行ってきました!
日本の山、海外のトレッキングなどでもすぐに指先や手の甲が冷たくなり手の感覚がなくなりやすく肘のあたりまで冷えが上がってきて、身体全体が冷えてしまう程の寒がりな私にとって、いつもグローブの選択には悩みがありました。前回のエベレスト&ローツェの登頂時も爆風の為、指先が冷えすぎて、手を振ったりたたいたりしながら歩いた苦い経験があったので、また同じ思いはしたくない!と思っていた。
そんな時、このグローブに出会ったのでした。8,000m峰5座目のチャレンジとなる今回の遠征での装備は、慎重に選びたかったので、運命の出逢い!?と思うくらいのタイミングで、一瞬で虜になりました。
雪山登山では冷え対策と操作性が必要となるのだが、この2つは相反する内容で、1つのグローブでまかなうには難しい。今までもいくつかのグローブをセレクトしては悩み、という事を繰り返してきた。冷えには分厚さも大事なのですが、あまり分厚いと操作性も悪くなる。そして厚さが逆効果となりアウターと合わせる際に圧迫されてしまい、余計に血流が悪くなり指先などの末端が冷たくなってしまう事もありますが、『ライナーplusフリースグラブ』は安心できる厚さがあり、程よいストレッチ性にも期待がもてた。
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また動脈が皮膚の近くを通っている手首までのカバーしてくれる保温性もあり、なんといってもフィット感が良い。
グーにしても指先にあそびが出来ない事がとても重要なのですが、自分の手にとてもよくフィットしてくれた。見た感じは普通のインナー手袋の様ですが、実際にフィッティングしてみると、上記のように、厚さ、ストレッチ性、フィット感、サイズ感がとてもよかったので、今回の遠征の相棒として取り入れてみた。
とはいえ、いきなり8,000m峰で使用するにはリスクもあったので、本番前にトレーニングで行った日本の雪山登山、順応の為に行ったアコンカグア遠征で実際に使用し検証&確認した結果、思った通りの機能を発揮してくれ、今シーズンの山行中手放せないモノとなった。
そしてアンナプルナⅠ峰の遠征では心強い相棒として一緒に山頂まで行ってくれました!!もちろん山頂へ行く際には、オーバーミトンも装着しましたが、ミトンの下に5本指の操作性の良いグローブをしているとミトンをしたままでも、アッセンダー(急斜面を登る際に使う登高器)の操作が出来る程のフィット感を発揮してくれました。
防水性はないので雨天や残雪気など水分がある際には注意が必要ですが、空気が冷たい時はしっかり保温、暑い時には程よく換気がされ、暑すぎず寒すぎず使用できるので、秋冬シーズンはもちろんの事、夏の高山でも活躍してくれるのでは?と思えるほどでした。 また、指先にあるタッチスクリーン用の部分も今までのモノよりも感度が良い感じがしました。
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これからも、良き相棒として一緒に山で活躍してもらおうと思っています!