戸塚 学『スコーロン』フィールドインプレッション2023 後編
2023.08.22 Update
スコーロンを着た渡り鳥 後編
北海道編
6月上旬まずはツアーの下見で霧多布湿原へ。ここで一般人からスコーロンマンに変身です。(ようするに着替えです)車外に出てわずか5分もしないうちに視界に何かが入る?着替えを終えて車内に入ると・・・小さな白い吸血軍団が5匹ほど入り込んでいました!
さっき視界に入ったのは奴らだったか!叩き潰そうかと思ったのですがこんなチャンスは無いので一緒にドライブすることにしました。
途中撮影をしながら車中同行したはずが、いつの間にか視界から消えてしまった。死んでしまったか?窓から出て行ったのか?はわからないがいなくなったのは確かだった。これもスコーロンの威力なのか?被害はなかった。
その後も野付半島や春国岱周辺(中には入れなかった)走古丹を廻ったが気温が低いせいかまとわりつく奴も小さな白い吸血軍団もそしてくっつく奴らにも襲われることがなかった。
撮影ツアーがはじまると根室地方はそれまでずっと霧&霧雨の日々がウソのように晴れ!となると気温が上がるので湿原では白い小さな吸血軍団が出るわけで・・・初日の夕方、夕陽を撮影しているとあっという間に体中に奴らがたかって来る。
全身スコーロンの私の身体にもしっかりとまとわりついている。しかし小さな白い吸血軍団は薄いスコーロン生地の上から血を吸うことができないが、とまって離れない。
近くにスコーロンを着ていないツアー参加者が来ると、今まで私にまとわりついていた奴らが参加者の方に行ってしまい私の周りの奴らの数が減ったのがわかった。とはいえうっかりグローブをしていなかった手を数か所やられてしまった。
じつは長年彼らとの直接対決に挑んできたのだが天候の関係で対峙することがなかったのです。そして今回の直接対決でわかったことは白い小さな吸血軍団は手強いがスコーロンは効果があると感じたこと。
理由はこ奴らは「首」と名のつく場所の裾のすき間から音もなく入り込み、群れで襲う特徴があります。私は手以外の手首、足首、首とまったく被害はありませんでしたが、スコーロン未装着の参加者はものの見事に「各首周り」に被害を受けてしまっていたのです。
スコーロン未装着の場合はこの小さな白い吸血軍団に対抗するには肌の露出を極力減らすのが簡単で一番有効となりますが、スコーロンを着ていた私は手首・足首を襲われることが無かったからです。その後もツアー中は草原や樹林帯周辺を歩いたのですが、初日以外は被害はありませんでした。
さて別件のガイド依頼で天売島へ出かけたのですが、もちろん私は全身スコーロンで挑みました。
とはいえ哺乳類がいない島だしひっつく虫はいないだろうと思っていたのだが、現地でガイドをしている知人から意外な答えを聞くことになりました。
それは天売島ではノネコを駆除しすべて譲渡させることに成功したことで、それまでは少なかったドブネズミが増えてひっつく虫も激増したというのです。それを聞いてスコーロンで来島したことは結果オーライだった。
ちなみに草の茂っている歩道を歩き廻ったのですが被害は0でした。まとわりつく虫の存在はまったく感じることもなく島を出ることができた。
結果 うっとおしさ感は8、被害は2だった。
宮古島編
久しぶりに訪れた宮古島でスコーロン体験ですが、メインが海および海岸なので今回は森でのレポートに限らせていただく。
森の1日目はスコーロンの帽子(SCシャドウハット)と手袋(SCエルゴグリッパー)をうっかり忘れて行ってしまい、飛び回る虫の餌食になってしまった!とはいえ上下の衣類は今年のスコーロンなので被害はないのだが、気がつけば顔と手が痒い!
これを読んでいる中年以降の方ならわかるはずだが、高齢者にはあの「ぷ~ん」という羽音が聞こえないので気がつけば「痒い」感覚に襲われ「被害に気がつく」のである。仕方がないので顔や手に「かゆみ止め」を塗りたくって戦いは終わった・・・今回は私のうっかり敗北である。
森の2日目 前回の失敗を深く深く反省をしたため、帽子と手袋を装着。おかげでこの日の被害は0! 16時30分~18時30分奴らが一番元気になる時間帯の2時間撮影を粘ったのだが、被害を受けることが無く撮影に集中することができた!やるぜ、スコーロン。
森の3日目 今回は同じ新型のフード付きで戦いを挑んだ。前回までは夕方だったのだが、この日は宮古島最終日という事もあり洗濯をしていないため5日間洗濯しないで使い続けたTシャツタイプは自分の汗と汚れによるかぐわしい臭いがするのでさすがに交換した。
朝なので水場に来る鳥たちがさほど来ないだろうと思っていたが、それが今年の宮古島は、梅雨明けから雨が降っていないせいで鳥たちがじゃんじゃん水場に来るので虫たちのことはすっかり忘れて撮影していたのだが・・・顔が痒い!数か所やられたようで「かゆみ止めを」を塗りたくった後、今回は帽子ではなくフーディータイプのシャツなので、フードを被ると・・・それ以降の被害はなかった。
あまりの効果てきめんにちょっと驚いた。これは誇大広告ではなくて事実なので書かせてもらいたい!
これはスコーロンあるあるなのだが、飛びながら寄って来る虫の羽音は聞こえなくともたくさんで寄って来られれば否応が無しに視界に入るのでわかる。しかし薄暗い場所だと老眼の場合、目に見えない。見えないし羽音も聞こえないので「いない」と錯覚して被害に遭う。
したがって敵は常に「いる」ことを前提に全身スコーロンで武装すれば不快感は減るのだと再認識した。 そしてオヤジの格言 モスキート音は聞こえず、目は老眼で小さな虫は見えなくて、痒くて気がつく被害かな。
結果 うっとおしさ感は5、被害は1だった。
鳥取編
さぁ、このレポートも最終地の鳥取です。ここでお恥ずかしい告白をしなければならない。荷物をまとめ車に積み込み「パーフェクト!」と現地についてスコーロンマンに変身をする時に気がついた・・・スコーロンのパンツを忘れて来たことを・・・。
履いてきた短パンではどうにもならない!車内を探すと嫁の黒いジャージを発掘!仕方がないので今回、上はスコーロン、下はジャージというスタイルでのレポートとなってしまった。まったく仕事だというのに我ながらのポンコツぶりに情けなくなる。
梅雨末期の鳥取は毎年線状降水帯を気にすることになるが、何とか下見で入った日は小雨ながら穏やかな現地入りとなりました。夕方到着してキャンプ場内の鳥たちの居場所や巣箱の位置を確認、夜はフクロウ類の行動観察をします。
日中はあらゆる吸血軍団の存在を感じなかったのだが、さすがに夜になると顔の周りにまとわりつく虫が視界に入る。
ここで、前の章で「老眼で虫が見えない」と書いていたではないかい!とツッコミが入りそうですが、じつはフクロウ類を撮影するためにライトアップされているので、まとわりつく虫が光の関係でよく見えるんだなぁ(笑)
そんな時は「フードガード」作戦で奴らの攻撃をかわすと効果てきめん。そしてツアー本番の1本目は雨の天気予報が外れほぼ曇りベースの3日間。初日にまとわりついた虫たちだがツアー中は気にならなかった。
2本目こちらは基本雨ベースの3日間。ところがこの時もまとわりつく虫が気にならなかった。問題はくっつく虫だがジャージなのでいつでもウェルカム状態だったのだが被害に遭う事はなかった。
もっともここでは哺乳類はツキノワグマ、アナグマ、ヤマネが目撃されているがイノシシやシカが目撃されていないことを考えるとひっつく虫の運搬役がいないので「いない、もしくはごくわずか」な可能性もある。
結果 うっとおしさ感は1、被害は0だった。
おわりに
今回は4月から7月中旬まであちこちを転戦しながら身体を張ってきましたが、虫たちが気になることがほとんどありませんでした。
特にスコーロンが対応を進化させてきたひっつく虫やまとわりつく虫の被害がないことやその存在をあまり感じないという事はそれだけ威力があるのだと感じました。そして小さな白い吸血軍団にも露出していない部分を襲われなかったことを考えればスコーロンは対応しているのだと感じました。
やはりフィールドでの快適さは慣れてしまうと忘れがちですが未装着で襲われた時に実感することは間違いなしだ。そしてこれは女性にうれしいことだと思いますが、こんな薄手な生地ながらUVカットはありがたいはずです。
もう一つ汗をかいた後、風が吹くとこの記事は汗を乾かす気化熱効果でとても涼しい。しかし気温が30度を超える炎天下ではあまり効果を感じられないので注意が必要となります。
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写真家
戸塚 学 | Gaku Tozuka
1966年、愛知県生まれ。野鳥を中心に撮影活動を続ける。現在は野鳥を含む環境の撮影を進め、「きれい・かわいい」だけではない「においのする写真」を目指す。作品は雑誌・カレンダー等に発表。 写真集「鳥たちは今日も元気に生きてます!」文一総合出版 他。