二神 慎之介『ウェットウェーディングギア』フィールドインプレッション

2022.08.09 Update

クマテンカラ。

ウェットスタイルで沢沿いの動物探し+毛鉤釣り。

 

お手製の毛鉤で釣り上げた、クマが出る沢のイワナ。

 

クマを探しながら毛鉤釣りを楽しむ。これを私は自分で「クマテンカラ」と呼んでいる。沢釣りの経験があまりなかった自分が、今のこのスタイルに落ち着くまでには実は数年かかった。軽量でストレスのないギアとの出会いも大きい。今日はそんな私なりの遊び方を紹介したい。

 

川の近くを歩いていくツキノワグマ。被写体に出会えたら、釣りのことはいったん忘れる。

 

春から夏までは、沢沿いを遡行して野生動物を探すことが多い。動物たちの食性に合わせて、ということもあるが、川は見晴らしが良く、ターゲットを見つけやすい、というのもその理由の一つだ。
私の場合、特にツキノワグマを探して夏の沢沿いを歩くことが多かった。

 

解禁の頃。クマはすでに目覚めているが、まだ山肌に緑は乏しい。

 

小型の望遠レンズを使って機動力を優先する時もある。

 

道なき道を行くため、小さな渡渉を繰り返すこともある。しかし、全体で見れば、行程の7割近くは石や砂の川岸の上、もしくは林床を歩く。アプローチの段階では林道歩きが長い。足もとの状況は様々だ。一方、背中には大口径の超望遠レンズを背負っている。大型の三脚も時には背負う。荷物は少しでも軽くしたい。だから、替えのシューズを持つのは避けたかった。

 

テンカラ竿を置き、高台に登って、遠くの山肌に被写体を探す。

 

目まぐるしく変わる地面に一足で対応する。沢でも滑らず、長い林道歩きでも足首をしっかりガードして疲れさせない。そんなトレッキングシューズと沢靴が一緒になったようなギアをずっと探していた。これに理想的な形で応えてくれたのが『ストーンクリーパーR ウェーディングシューズ』だ。歩き続けても疲れないトレッキングシューズと、沢で滑らない沢靴を二役でこなしてくれる。製品本来の使い方ではないかもしれないが、この一足があれば渡渉にも、林道歩きにもストレスを感じない。

 

ウェットスタイル、クマテンカラの足元。

 

もちろん、夏の撮影にはウェーダーも重い。水に濡れたり、陸に上がったりを繰り返すので、保温性も必要だ。ウェットウェーディングタイツに、ULウェーディングLソックスを組み合わせたウェットウェーディングスタイルが最適だという結論に至るのは自然な流れだった。

 

水辺で会う動物は、クマだけとは限らない。

 

ストレスなく沢沿いの動物探しができるようになっても、被写体はなかなか見つからない。足もとには沢である。人も滅多に入ってこないし、釣れるのではないか。そう思ってクマを探しの合間に、釣りをしてみようと思い立った。上流まで詰めていくので、水量は少ない。荷物も軽くしたい。ならば、シンプルな毛鉤の釣りがいいだろう、ということで、テンカラ釣りを始めてみた。これが『クマテンカラ』と私が呼ぶ釣りの始まりだった。

 

本来の被写体である野生動物に出会えなくても、イワナを撮るのはとても楽しい。

 

被写体が見つからない時の息抜きのつもりが、今ではイワナを釣り上げるのが、大きな楽しみの一つになっている。山で拾った羽根でヘタな毛鉤を巻くことも覚えた。(私はこの不細工な毛鉤を”ねぐせ毛鉤”と呼んでいる)

 

ねぐせ毛鉤。クマが出る山で拾ったキジの羽根を見よう見まねで巻いてみた。

 

もちろん、釣りに夢中になっては視界が狭まり、クマとの接近遭遇の危険も増してしまうので、周辺への注意は常に怠らない。
遠くにクマを見つけた時は、レンズを出し、いない時は竿を出す。これが私なりの、今の川歩きの楽しみ方だ。

 

ストーンクリーパーR ウェーディングシューズ。
現在ではこのシューズが夏の遡行の最重要装備の一つとなっている。

 

 

 

 

写真家

二神 慎之介 | Shinnosuke Futagami

 

1977年生まれ、愛媛県出身。道東を中心に野生動物を追い、森のヒグマをメインの被写体に撮影活動を続ける。現在は東京在住。北海道と行き来する生活を送っている。
<WEBサイト> Sinh Futagami Photography.