花谷 タケシ『パワーフィルハイブリッドジャケット&パンツ』フィールドインプレッション
2021.11.05 Update
こんにちは。カナダ・ユーコン準州在住の野生動物写真家 花谷 タケシです。
昨冬、注目の商品『パワーフィルハイブリッドジャケット』と『パワーフィルハイブリッドパンツ』を森の中でじっくり使ってみたのでフィールドインプレッションをお届けします。
注目の理由は使用されている素材、ポーラテック社のパワーフィルという化繊綿です。パワーフィルは同社において今までで最も暖かい保温素材と謳われ、100%リサイクルプラスチックを原料としているので環境にも優しく、疎水性に優れるため水に濡れても保温力が落ちにくいというアウトドアに適した性質を持っています。繊維が中空であることや独自の製法により対重量保温力も高いので、同じ暖かさの製品をこれまでより軽量に作ることが出来ます。これらの特性を活かしたパワーフィルハイブリッドジャケット&パンツは、アウトドアでのアクティブな使用に向けて作られています。
私の住むユーコンの冬は常に極寒と思われがちですが、活動しやすい程度に暖かくなることもあります。気温が上がり-2℃、体感温度で-9℃とマイルドになったときに、スノーシューで森を散策しながら撮影に出かけてきました。
フォトレックデュラレージ32にスノーシューを取り付けて森へ
第一印象は「薄くて軽い」でした。正直なところ、体を動かすとはいえ氷点下でこのアウターで大丈夫か少し不安でした。念のため上下厚手のメリノウール製肌着を着用し、上半身は更に薄手フリースのカットソーを着込みました。更に念には念をということで薄手ダウンジャケットもザックに詰め込み森の中へ。
しかしその心配は動き出してすぐに取り除かれました。重量に対する保温力が高いという謳い文句は伊達じゃないと実感。ゆっくり歩いているのに少し汗ばんできたので更にペースを落とすことに。寒い環境では止まった時の汗冷えは大敵です。アクティブ用途向けと思われるこの製品は、ジャケットは腕の内側から脇下~脇腹にかけて、パンツは内股全体が、伸縮性に富んだ一枚地となっており中綿は入っていません。そのため体温が上がってくるとそこから余分な熱を適度に排出してくれているようです。一方で冷やしたくない胸からお腹、背中、肩、腰、尻回り、太ももはパワーフィルでしっかり覆われているので蓄えられた熱が逃げている感じはありませんでした。
足首は伸縮素材でフィットする仕様。熱が逃げにくいですが、これだと足首から靴の中に雪が入るのでゲーター(スパッツ)を着用しました。そのおかげで足首が冷気に晒されることも、雪で濡れることもなく、終始快適にスノーシューで歩き回ることが出来ました。
腕の内側から脇下、脇腹までは一枚地のため、伸縮性と体温調整に優れる
内股も伸縮性のある一枚地のため、中綿入りパンツなのに激しい動きも妨げない
氷点下で動き回るときの服装は意外と難しい。この製品は最適解の予感
二度目は運動目的のクロスカントリースキーで着用してみました。とは言え森に入るのでカメラを持たずにはいられないのは写真家の性でしょう。さすがに望遠レンズは持っていきませんが、小型軽量なスナップ用セットアップをウエストバッグに忍ばせます。
クロスカントリースキーでエクササイズ…のつもりでもカメラが手放せない
スノーシューの時はその保温性を過小評価していたため中に着込み過ぎて汗ばむ事態になったので、運動量の多いクロスカントリースキーではインナーを薄めにして調整。全体的なストレッチ性も十分で、スノーシューよりも体を大きく動かすクロスカントリースキーでも生地が突っ張るようなこともなく、快適に滑ることが出来ました。
伸縮素材が適所に使われているので動きが妨げられることもない。
伸縮性の良さは動体の撮影においてもありがたいものです。特に飛ぶ鳥を手持ちで追いかける時などは腰から上だけをどんどん捻っていくので生地が突っ張ると追い難いのです。また、この薄さ軽さと伸縮性は、夏でも活躍してくれることになりそうです。ユーコンでは夏でも曇って風が吹いたりするとあっという間に体温を奪われるので、特にカヌーの時には常に薄手の中綿入りジャケットを携行するようにしています。パドルで漕ぐのに結構体を捻りますし、水濡れに強い(濡れても保温力が落ちにくい)というのもカヌーに適していると思います。
もう一点特徴として、ジャケットはフォックスファイヤーのユニットシステムに対応しています。私が持っているユニットシステム対応アウターというとフォトレックジャケットになりますが、これにライナーとして取り付けることが出来るのです。これまでは厚手のフリースジャケットかダウンジャケットしかなく、これらでは着膨れして森を歩き回るときなどは少し動きにくさも感じていたのですが、このジャケットであれば軽快さと保温性を両立してくれます。
また、このジャケットはフード付きですが、ユニットシステムに対応させるために取り外し出来るようになっています。冬場にスノーシューやクロスカントリースキーをする際は、急な天候の変化も考えるとフードは付いていて欲しいもの。一方で夏のカヌーの時にはあまり必要性を感じないので、用途に合わせて着脱できるのはとても便利です。
フードを取り外し、ユニットシステムでフォトレックジャケットのライナーとして装着
パンツは厳冬期のオーロラ撮影時にミドルレイヤーとして中綿入り防寒パンツ(ディメンションDSパンツ等)の下に重ね履きしていました。厚過ぎず保温力が高いので、重ね履きしても窮屈さは無い一方で確実に保温力が向上し、ミドルレイヤーとしても最適だと感じました。
このジャケットとパンツの組み合わせは、単体でアクティブな使用にも好適ですが、アウターシェルの下にミドルレイヤーとしても使えるため、今後様々なシチュエーションで大活躍してくれそうです。
■花谷氏による『パワーフィルハイブリッドジャケット&パンツ』フィールド動画
写真家
花谷 タケシ | Takeshi Hanatani
1970年、京都市生まれ。独学で写真を学び、1998年よりカナダやアラスカにて野生動物の撮影を開始。2007年カナダへ移住、2010年よりユーコン準州在住。ユーコン川畔に住み、近くに世界遺産クルアーニー国立公園、冬空にはオーロラが舞う環境にて、極北の厳しい自然環境の中であるがままに生きる野生動物の姿を追い続けている。元Foxfire Storeスタッフ。
<WEBサイト> 熊魂 yukon-bearspirit