二神 慎之介『フォトレックジャケットM VI』フィールドインプレッション
2020.11.12 Update
春から晩秋、山から海と、様々な風景の中にヒグマの姿を追い求めてきましたが、中でもサケ・マスが遡上する秋の河川は、とても思い入れのあるフィールドです。梢の下を静かに流れる河川の中に、無数にうごめく遡上魚の気配は、それだけで種や地形の垣根を超えた、自然の生命の深い繋がりを意識させてくれます。
そこを訪れたヒグマの痕跡を目の当たりにすると、たとえヒグマに出会えなくても、心が揺さぶられ、満足してしまいそうになる自分がいます。
撮影のチャンスを待って、秋の川岸で長い時間を過ごすことも多いです。これが非常に寒い。ひょっとすると、真冬の撮影よりも防寒を意識しているかもしれません。単に気温という点においては、当然氷雪の中の真冬の撮影の方が過酷でしょう。しかし、秋の河川で厄介なのは「気温差」です。現場に着くまでは汗ばむほど暑くても、秋の河岸に到着すれば、川に沿って冷たい秋の風が吹きつけ、たちまち体温を奪われてしまいます。撮影に必要な集中力を維持するためにも、防寒はとても大切な要素。フォトレックジャケットは、そういった撮影時には欠かせない、心強いアイテムとなってくれています。
ダウンやフリースなど、他アイテムと組み合わせができるユニットシステムは、気温差が激しいフィールドでは非常に重宝する機能。特にコンパクトに持ち運べるダウンは必ずと言っていいほど、フィールドに携行しています。
さらに大型のポケットは、交換レンズだけでなく、レンズを装着したミラーレスカメラなどもそのまま収納できるサイズ。メインである大口径望遠レンズを構えながら、画角を変えたい時には素早く取り出して、すぐに撮影をすることができます。その他の豊富なポケットには、フィルタや予備バッテリーなど、フォトグラファーに必要な様々なアイテムを、すぐに取り出せる位置に収納できます。
待ち時間が非常に長く、いったん被写体が現れれば素早い対応が求められるのが野生動物撮影。身体がいつでも動かせる状態で寒さに耐え続けるための防寒性能と、撮影機材に合わせた収納力が、フォトレックジャケットの「撮影機材の一部」としての最大の魅力と言えるでしょう。
最近では、ヒグマを措いてサケやマスそのものにフォーカスして撮影を行うことが増えてきました。地上からだけではなく、ドライスーツを着込んでの水中撮影にもチャレンジしています。水面下で見る遡上魚たちの表情は雄々しく、生命感にあふれていて、カメラを構えずとも、見ているだけで心を揺さぶられ、撮影者としてはもちろんですが、それ以前に観察者として、自然が好きな一人の人間としての純粋な喜びを感じます。
秋から冬にかけての北海道の河川は、ドライスーツの下にどれだけ着込んでもあっという間に身体が冷えてしまいます。撮影が終わって、すぐに羽織れるフォトレックジャケットは、そんな水中撮影でも重宝しています。
長い時間、タフな状況下で待ち続け、一瞬のチャンスを逃さない。フォトレックジャケットは、そんな撮影活動に挑むネイチャーフォトグラファーに、強い味方となってくれるアイテムです。
写真家
二神 慎之介 | Shinnosuke Futagami
1977年生まれ、愛媛県出身。道東を中心に野生動物を追い、森のヒグマをメインの被写体に撮影活動を続ける。現在は東京在住。北海道と行き来する生活を送っている。
<WEBサイト> Sinh Futagami Photography.