戸塚 学『スコーロン』フィールドインプレッション
2019.07.24 Update
あの嫌な痒さが続く虫との対決~北海道編
台湾から戻り、スコーロンウェアの上下を洗濯した。さすがに汗まみれになっていたので「ニオイ」は気にならないが気分を一新するためだ。
オシドリ
苫小牧に上陸後、翌朝札幌の公園にオシドリの親子の撮影に入った。はじめはグローブをしていたが、やはりミラーレスカメラの液晶画面を指で操作をする際、手袋でも操作ができるようにしてあるとはいえ、素手のような操作が自由にできない。急いでいる時など面倒くさくなり途中からグローブをしないで撮影を始めた。全身最新のスコーロンウェア+帽子なので視界にまとわりつく虫の姿無し。かなりの人、それもカメラマン以外にもオシドリの親子を見つけると一般の人が集まって来るので虫たちも集まって来るかと思いきや、虫の気配はない。朝5時30分から撮影して途中食事に出るまで身体に「痒み&痛み」は感じられない。夕方16時まで撮影して一旦切り上げるまで問題はなかった。
ノビタキ(左上)、コヨシキリ(右上)、ベニマシコ(左下)、オオジシギ(右下)
ただ撮影中に地元の方が「何の虫かわからないが、やられてひどいことになっている」とパンツのすそをめくって見せてくれると、それはあの小さなハエのような形の虫の吸血あとで、赤く腫れあがり、吸血痕から汁がにじんでいた。こいつは本当に厄介で腫れるし、嫌なかゆみは1週間ほど続くし、かゆみ止めが効かない。スコーロンのパンツにはインナーカフスがついているので靴下を履いていればまずこのように裾に潜り込んで刺されることがない。
夜、撮影を終えてコンビニでお弁当を買おうと思ったら、右手首が痒い・・・。あれっと思ったが気にせず車内へ。食事を済ますと今度は左手首が痒い。よ~く見ると右に1箇所、左に2箇所、赤く小さな点が・・・。それが痒い。まずい、調子こいて手袋をしなかったばっかりに3箇所も被害にあってしまった。スコーロンのシャツは親指を出す穴があるので、手の甲まではカバーできるが、うっかりそれすらしなかったため初日にやられてしまった・・・不覚だ。
ちなみにシャツのサムホールを利用して手袋をすると腕時計が見えなくなる。ポケットから携帯電話を出せばいいだけだがやはり面倒くさく、腕時計で時間を確認したいので仕事中だけはシャツの上に腕時計をすることにした。
ウソ(左上)、カッコウ(右上)、ウトウ(左下)、ケイマフリ(右下)
その後は天売島に渡ったが、札幌での失敗を繰り返さないように心がけ被害はゼロ。一旦根室方面へ進路を取った。ここには湿原に現れる最も厄介な米糠のような小さな悪魔たちがいる。別海町の野付半島は小鳥も多いが、この小さな悪魔も多くハンパない。もっとも彼らが出る時間帯は晴れた日の早朝で無風もしくは弱い日。じつは以前もこの悪魔たちと戦うためにここを訪れたが天候が悪く、襲われることが無かった。そして今回も天候が悪くおまけに寒くて強風なので勝負にならなかった。
ちなみに彼らの攻撃は気が付けば顔と言わず手足にまとわりつき小さな身体を使い、服の隙間から襲ってくる。はじめは「チカッ」とした刺激がしたかと思ってみると大群で襲ってくるの姿はまるで煙に巻かれたようになる。そして最後は悲鳴を上げて身体をばたつかせて逃げることになる。しかしスコーロンでなくともシャツやパンツの袖を塞げば小さい故、服の上から襲われることはない。なのでスコーロンで完全防備をすればどうなるかを試したかったのだが、今年も戦いにはならなかった。また小清水原生花園でも小さな悪魔たちがいそうだったが、天候・気温とも申し分なかったがその姿を見ることはなかった。
ビンズイ
カワガラス(左上)、タンチョウ(右上)、小清水原生花園(左下)、シャチ(右下)
知床半島はエゾシカが多く、シカ多い=ひっつく虫も多いのだ。この時期シカの耳に黒い塊がついているのを見ることがあるのを見たことがある人も多いと思う。あれはイボではない。そう、ひっつく虫なのだ。私自身スコーロンを身に付けてからまだ被害にあってはいないが、友人の話ではスコーロンウェアを着いてるとひっついても逃げるというのでそれをこの目で確かめたかった。とはいえクマのいる場所で意味なく森の中を歩くのもばかげている。
しかしありがたいことにそのチャンスは突然訪れた。森の中の道路脇にクマゲラの巣穴を見つけたのだ。道路から少し茂みに入り身体を隠すようにスタンバイ。これはひっつく虫が寄ってきそうだ。ふと足元を見ると北海道初日に敗北したあの嫌なかゆみが長く続く小さなハエのような虫が足元にたかっている!しかし彼らはあまり上半身に来ないのだ。どうも長靴周辺に集まるようで、これはゴムの臭いなのか、はたまた長靴の茶色い色なのかはっきりしない。とにかく長靴のその上の部分に集中する。時々視界に入って来るので、フードを被り目の辺りだけを出して上から帽子を被って対処したためか、今回は被害は0だった。林の中で下草もあるのでひっつく虫に期待をしたが襲われることはなかった。
知床原生林
クマゲラ
エゾライチョウ
これはスコーロンの効果ではないが、じつはこの場所で車のわだちで足を引っかけてアスファルト道路に無抵抗ダイブをしてしまった。見事な飛びっぷりで被害は左手首、肋骨(これは双眼鏡を挟んだ状態)左頬っぺたをもろに打ち付けた。その痛さと言ったら・・・地面で声も出せずにしばらくのたうち回っていた。しかし顔はフードでカバー、手は手袋でカバーされていたことで出血をすることはなかった。もしスコーロンで全身カバーをしていなかったらと思うと薄い生地とはいえかなりなダメージは逃れることはなかったと思った。(*ちなみに肋骨にひびが入っていた!)
今回、小さなハエのような虫はスコーロンの上から攻撃することはなったが、うっかりと皮膚が露出している場所があると被害に遭うので完全防備で臨みたい。奴らにはスコーロンの効能はあまり効かないのかもしれない。ちなみに彼らの嫌うニオイはたばこの煙・昔からあるトイレの芳香剤・ハッカ油なので多い場所ではハッカ油を併用したい。米糠のような小さな悪魔たちとの出会い自体が無かったのでいずれ戦いを繰り広げたいと思う。ひっつく虫での実証もできていないので今後の宿題だ。
滞在日数13日、被害箇所3、 撮影中のみスコーロンで身を固めていたがそれ以外は脱いでいた。洗濯は滞在中にしなかったのは汗もかかないし見た目も汚れていなかったためだ。私のオヤジ臭もさほど気にならなかったがむやみやたらとスコーロンは洗わない方がいいのでこのレポートを読んで「不潔」とは思わないでいただきたい。(笑)
次回沖縄宮古島編へと続く。
写真家
戸塚 学 | Gaku Tozuka
1966年、愛知県生まれ。野鳥を中心に撮影活動を続ける。現在は野鳥を含む環境の撮影を進め、「きれい・かわいい」だけではない「においのする写真」を目指す。作品は雑誌・カレンダー等に発表。 写真集「鳥たちは今日も元気に生きてます!」文一総合出版 他。
<WEBサイト> Happy Bird’s Day
【お断り】このレポートは事実に基づいて掲載しておりますが、スコーロンの効果効能は使用環境・条件等により、必ずしも保証するものではございませんので、ご理解のうえご活用いただきますようお願い申し上げます。
※一部具体的な虫の名前を“虫”という表現に置き換えて掲載しています。