花谷 タケシ『スコーロン アルティメットフーディ&パンツ』フィールドインプレッション

2019.06.13 Update

自然写真家にとって、撮影機材と同じくらい重要な【撮影に集中するため】の必須装備=スコーロン

 

SC アルティメットフーディ&パンツ = 夏の定番撮影スタイル

 

 こんにちは。極北カナダ・ユーコン準州在住野生動物写真家の花谷タケシです。今回は、今やフォックスファイヤーの定番シリーズともいえる『防虫素材・スコーロン』を使った商品群の中から「SCアルティメットフーディ&パンツ」のフィールドインプレッションをお届けします。まだご存じない方のために簡単に説明しますと、『スコーロン®』はアース製薬と帝人フロンティアが共同開発した、繊維に虫を寄せつけない特殊加工を施した素材のことです。

 

 スコーロン製品を使用するのは発売当初に数点試させて頂いて以来になります。当時試させて頂いた商品は、日本の真夏向け商品だったために生地がとても薄く、こちらの気候に合わなかったためスコーロンの効用とは関係の無い理由であまり着なくなってしまっていました。しかしスコーロン製品も発売から年月を重ね、今ではその商品展開もとても広がりました。そこで昨夏から上述のアルティメットフーディ&パンツを導入し、ユーコンのフィールドで試してみました。ちなみにアウトドア好きな方なら耳にされたことがあるかもしれませんが、「アラスカの州鳥は蚊」(本当はライチョウ)というジョークがあるほどこの辺りは蚊が多いです。(注:カナダ・ユーコン準州は米国・アラスカ州の東隣りです。)つまり、本来であればとてもスコーロンの恩恵を受ける地域に生活しているのです。 

 

 さて、手にしてまず感じたのは、以前試した商品と比べて生地が非常にしっかりしていること。肘・肩・膝・尻などは生地を二重にして補強されています。私の撮影用途では道の無いところを藪漕ぎしたりしますので強度は重要です。防虫をあてにして着用しているのに破れて穴が開いてしまっては意味がありません。また、細かな部分で実用的な装備が散りばめられていて、実際に試すのがとても楽しみになりました。

 

 それではまずフーディから見ていきましょう。上述の通り、肘、そして肩が二重生地となっています。生地が突っ張る部位ですので二重にすることで強度だけでなく虫刺され防止にもメリットがあるはずです。生地自体は「トリプルドライ カラット」と呼ばれる汗処理機能に優れた仕様。汗をかいても撥水糸が汗戻りをおさえ、サラッとしたままで肌に貼り付くようなことがありません。袖口には親指を通すサムホールが設けられています。これのおかげで手の甲と平までをスコーロン生地で覆うことができます。手袋と重ね合わせれば手首に隙間ができることもありません。虫対策として実はこれはとても重要です。長袖 + 手袋でしっかり隠したつもりでも、撮影を終えると手首にたくさん虫に刺されたあとがあった…なんてことを何度も経験しているのです。フードは開口部の少ないバラクラバ(目出し帽)タイプ。嫌な虫に纏わりつかれるような環境下では、露出部を最小限に抑えられます。通常のフードだと被っていても首元に入り込まれたり、フードと耳の隙間に入り込まれようものなら大騒ぎになります。見た目はかなり怪しい出で立ちになってしまいますが(苦笑)、森の中では誰に見られるわけでもないですし、後で痒くて苦しむことを考えたら気になりません。もう一点気に入ったのがフロントジッパー。目が粗めなのですが、とてもしなやかでスムーズに開閉できます。好みの問題なのかもしれませんが、私はとても気に入っています。皆さんも是非店頭で確認してみて下さい。

 

フードを被ると少々怪しい見た目になるが、肌の露出がとても少ない。カメラを構えると肌はほぼ見えない状態に。手袋の上からサムホールを通しているので手首の露出もない。

 

 今回試してみてフーディ以上に気に入ったのはアルティメットパンツの方でした。まず生地の厚さや動き易い立体裁断が自分の撮影にとても合っています。開口部の大きな前後のポケットは出し入れがしやすい上にかなりの収納力があり、それでいてシルエットも悪くありません。以下の写真をご覧頂くとわかる通り、一時的になら結構な大きさのレンズさえ入れることができる大きさ・深さです。

 

前後ポケットの大きさの目安にウォーターボトルを入れてみた。
黄色のキャップは1L、青のキャップは500mlのボトル。

 

ジッパー+フラップ付きのポケット(女性用はジッパーのみでフラップなしになります)はスマートフォンを入れるのにジャストサイズで定位置に決定。もう片方には鍵を入れることが多いです。森の中で貴重品を落としてしまっては見つけ出すことはほぼ不可能なので、ジッパー付きポケットがあるのはありがたいです。

 

大腿部のポケット。ジッパー付きポケットにはスマートフォン(参考:ケース付きiPhone 6)、縦に細長いフラップ付きポケットにはマグライトなどが良い感じで収まる。

 

 最も気に入ったのがニーパッドを入れられる膝裏のパッド用ポケット。動物や鳥を手持ちで撮っていると、片膝を付いてレンズを支えている左肘を膝に乗せて安定させることがとてもとても(本当にとっても!)多いのです。「よくぞそこに気付いてくれた!」と感心しきりです。商品説明に「写真撮影やガーデニングなど…」とありますが、農業や林業もそうですし、とにかくアウトドア全般で恩恵を感じられるはずです。私は地元のホームセンターで購入した建設作業向けのニーパッドを入れています。専用品かのごとくパーフェクトサイズでびっくりしています。物が豊富な日本ならサイズだけでなく素材や厚さなど自分に合ったものを見付けられるのではないでしょうか。一点だけ改善を望むなら、このパッドポケットの上下の合わせにベルクロなど止められる工夫があるといいと思います。履く際に足先がこのポケットに引っかかってしまうことがあり、勢いよく足を突っ込んだ際にポケットを破いてしまいそうなことがありました。すんでのところで気付いて足を止めたので破れずにすみましたが、それ以降履く時には十分注意しています。皆さんもお気をつけ下さい。

 

パンツを裏返して写真左側のポケットにニーパッドを半分入れかけている状態。ポケットはメッシュ生地で汗をかいてもベタ付くことがない。

 

片膝を着き、反対の膝にレンズを支える左肘を乗せて安定させる。とてもよく取る体勢。ガレ場や砂利だとニーパッドがないととても痛いので非常に助かっている。

 

裾はスコーロン素材のインナーカフス付きとなっており、虫の侵入を防ぐだけでなく、藪漕ぎの際に裾がめくれてすねやふくらはぎに擦り傷を作るのも防いでくれます。(気が付いたらいつの間にか流血していた…なんてことがよくあったのです。)

 

裾を捲ったところ。ニーパッドを入れるポケットの下からインナーカフスとなる。

 

 以上のように、この上下組み合わせはとても気に入っており、夏場の撮影においてはユニフォームのごとく必ず着るようになりました。スコーロン製品が出始めた頃は、正直なところ『防虫生地』という素材が売りなだけで、防虫機能を考慮しなかったときの製品自体の魅力はちょっと物足りなかったように思います。しかし年月を重ね、『防虫素材の衣類を求める人々が実際にどのような環境下で使用しているのか』を、作る側が徐々に理解してきているのだなと思います。動物撮影ではひとたび撮影を開始するとファインダーを覗いたまま、シャッターボタンに指をかけたまま、微動だにせずただひたすらチャンスを狙って待ち続けることがほとんどです。じっとしていれば当然どんどん虫が集まってきます。以前は感覚で「あ、手首に止まった、顔に止まった、刺された!」とわかっていながら我慢して撮影を続け、あとから痒くて苦しむことが当たり前でした。しかしスコーロン製品で『着る防虫』をすることで、以前よりも刺されることは確実に減りました。スコーロンを着ていれば全く虫が寄ってこなくなるというわけではないのですが、「刺さずに離れる」とわかっているので以前ほど気にすることなく撮影に集中できるようになりました。「害さえなければ周りにいても気にならない」というわけです。動物写真家として自分の使用環境を念頭にお話しましたが、アウトドア活動全般で考えても重宝する機能満載のよく考えて作られた製品だと思います。そんな高機能製品に防虫効果のあるスコーロン生地を使い、更に魅力を高めていると感じました。

 

 製品そのものの魅力が上がりこちらの商品を常用するようになったことで、スコーロン素材の効果も再確認しています。そのためハードなアクティビティでない時は昔のスコーロン製品も引っ張り出して着るようになりました。写真活動以外でもキャンプやハイキング、カヌーなど、ここでは「遊び=アウトドア」なので、スコーロン製品はとても重宝します。スコーロンの良さを再確認した昨夏からは、家族で遊びに出たとき小学生の娘にも自分のスコーロンカットソーを袖をまくって裾を縛って着させていたので、「スコーロン製品で子ども用があったらいいのになぁ」と思っていたところ、心の声が天に届いたのか今春夏から子供用スコーロン製品がラインナップされました!フォックスファイヤーにはこれまで子ども用衣類がなっかたので驚きと共にたいへん喜んでいます。今夏はこれを購入し、家族でも存分にアウトドアを楽しみたいと思います。小学生ぐらいのお子さんがいらっしゃる方はこちらも要チェックですよ。遊んで帰ってきたら、自分は虫に刺されていないのに大事な我が子は刺されて痒みに苦しんでる…なんて辛いですからね。スコーロン製品で家族そろって快適なアウトドアライフを過ごしましょう。

 

 

 

 

写真家

花谷 タケシ | Takeshi Hanatani

 

1970年、京都市生まれ。独学で写真を学び、1998年よりカナダやアラスカにて野生動物の撮影を開始。2007年カナダへ移住、2010年よりユーコン準州在住。ユーコン川畔に住み、近くに世界遺産クルアーニー国立公園、冬空にはオーロラが舞う環境にて、極北の厳しい自然環境の中であるがままに生きる野生動物の姿を追い続けている。元Foxfire Storeスタッフ。
<WEBサイト> 熊魂 yukon-bearspirit

 

 

 

【お断り】このレポートは事実に基づいて掲載しておりますが、スコーロンの効果効能は使用環境・条件等により、必ずしも保証するものではございませんので、ご理解のうえご活用いただきますようお願い申し上げます。
※一部具体的な虫の名前を“虫”という表現に置き換えて掲載しています。