清水 哲朗『スコーロン』フィールドインプレッション

2016.09.01 Update

“あいつら”からのストレスを激減してくれたスコーロンアイテムたち

 

2016年6月下旬から7月上旬にかけて3週間のモンゴル取材に出かけた。目的はロシア国境に近いモンゴル最北部のタイガの森に暮らすトナカイ遊牧民を撮影することだ。現地ではウランバートルを基点に12泊13日の予定を組んだのだが、何せ遠い。移動手段は飛行機(片道約700Km)、車540km、バイク16km、馬210kmを利用。最低でも8日間は移動日にかかる。馬では湿地、川、ガレ場など難所をいくつも抜けていけねばならない。

 

 

長い道中での一番の懸念材料は“虫”だ。過去に2度訪れている土地だが、虫たちが常につきまとい、隙(間)さえあれば攻撃(刺す・咬む・体内に侵入)してくるのだ。テントに入ってもF1のような羽音がテント外のあちこちで夜遅くまで聞こえた。そえゆえにストレスの元である“あいつら”の対策をどうにかしなければならなかった。過去にはアメリカ製の虫除け製品を使用し、それなりの効果が得られたのだが、7年前に購入したものを今さら使うのは不安でしかない。そこで今回は自然写真家たちの間で話題のスコーロンを導入することに決め、さっそくネットで注文した。

 

 

届いて驚いたのが、その軽量ぶりだ。5品注文したはずなのに空箱のダンボールが届いたのかと疑うほどに軽かった。これほどまで薄手の素材がどこまで“あいつら”に通用するのかは未知数だったが、超軽量でかさばらない素材は旅人にはありがたい。モンゴルに入ると足首周りを攻撃されないように乗馬用のブーツを購入した(登山靴とパンツの組み合わせでは、乗馬したときに足首周りが露出し、防御が手薄になる)。

 

 

25歳の遊牧民と二人で馬にまたがり出発すると、森の入口付近(海抜1700m前後)でさっそく虫たちの歓迎を受けた。馬たちは上下に激しく頭をゆすりながら歩を進め、時には急停止して、やられた患部(前脚)を噛んでいる。手綱を握る僕の周囲にも近寄ったり一時的に衣服に止まるのだが、被害はない。不快な羽音を耳にする以外は見えないバリアーに護られている安心感があった。

 

 

手袋(SCグリッパー)は、SCガイドフーディの袖口から親指を通すことで手首周りの防御が強化できることもわかった。馬から下りて、小休止しているときも虫たちの攻撃は止まらなかった。思わず遊牧民と顔を見回せ、苦笑いする。彼の顔や首周りの数箇所は赤く膨れあがり、しきりに掻いている。コーヒーを飲みながら着用しているスコーロンの自慢をしたら「そんな素材があるのか」と驚いていたが、どうも半信半疑のようであった。

 

 

虫たちの攻撃は日没後(深夜0時近く)にテントに入るまで続いたが、スコーロン効果は覿面だった。乗馬移動は大変だったものの、懸念していた“虫の攻撃”から護るという点については快適な移動であったことは間違いない。ただし、スコーロンの信頼性は抜群だが、絶対ではない。露出している顔付近は集中的に狙われやすく、夕方の撮影時にカメラと帽子及びフードのわずかな隙間、額に1箇所やられたことも正直に報告しておく(今回の取材での被害はこの1回だけだった!)。

 

翌日、トナカイ遊牧民の居住地に着くと、オルツ(住居)の近くに小川があったが、山からの適度な風が吹くためか、虫たちは皆無。トナカイを虫たちの攻撃から護る彼らの生活の知恵を実感した。滞在中は快適な取材ができ、虫たちの存在を忘れていたが、帰り道はまた虫たちに囲まれ、森を出てようやくホッとすることができた。

 

 

今回使用したスコーロン製品は取材をしていた2週間、洗濯もせずに着続けたが、大量の汗をかいてもすぐに乾くため、不快な肌のべたつきはなく冷えを感じることもなかった。またストレッチ性が高い素材のため、全機材を背負っての長距離乗馬でも肩のスレがなく着心地が良かった。今回の実績でスコーロンは手離せない取材アイテムのひとつになった。僕だけでなく一緒に行った若い遊牧民も別れ際に「今度お土産にぜひそれを買ってきてくれ」というほど、スコーロンは魅力的に映ったようだ。

 


写真家・清水 哲朗(しみず てつろう)

1975年、横浜市生まれ。日本写真芸術専門学校を卒業後、写真家・竹内敏信事務所で助手を3年務める。23歳でフリーランスに。独自の視点で自然風景からスナップ、ドキュメントまで幅広く撮影。1997年以来モンゴルでの撮影をライフワークとしている。写真集に『CHANGE』『New Type』があり、個展も多数開催。受賞暦は第1回名取洋之助写真賞、2014日本写真協会賞新人賞など。公益社団法人日本写真家協会会員
<WEBサイト> Tetsuro Shimizu Official Web Site

 

【お断り】このレポートは事実に基づいて掲載しておりますが、スコーロンの効果効能は使用環境・条件等により、必ずしも保証するものではございませんので、ご理解のうえご活用いただきますようお願い申し上げます。
※一部具体的な虫の名前を“虫”という表現に置き換えて掲載しています。